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賢者の書

人生との向き合い方を伝える人気作 今日ご紹介する本は、 ”賢者の書(喜多川泰 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)” という自己啓発本です。 初版は2009年ということで少し古い本にはなりますが、著者である喜多川さんは最近でも ”運転者” や” 手紙屋” といった本を出版しており、どれも人気作です。 一貫して伝えられることは、 人生をどう生きるのか ということ。 どの作品にも、心に響くフレーズを見つけられることと思います。 今日は賢者の書の中から、私のおすすめの文章を抜粋して紹介していきます。ぜひ皆さんも、お気に入りの言葉を見つけてください。 物語の簡単なあらすじ    冴えない人生を送っている男:アレックスは、家族の相手にも仕事にも疲れ、一人になりたくて飛び出した。先のことを考えての行動ではなく、衝動的なもので、気づいたら自分の思い出の中のある場所へと辿り着いていた。 ベンチに座り、幻想的で美しい自然の姿に呆然としていると、ある少年がこちらへ歩いてくることに気づく。彼の名はサイードと言い、この出会いがお互いに大きな影響を及ぼすことになるのだった。 導入は、アレックスとサイードの出会いです。 サイードは遠く離れた地から一人で旅をしてきた少年での 、 9人 賢者に会い、自分だけの賢者の書を完成させる旅 をしています。サイードはすでに8人の賢者との出会いを済ませ、後は最後の一人にこのベンチで出会うことになっているとのこと。アレックスはサイードの大切な賢者の書を読ませてもらう許可を得て、彼が何を得てきたのかを知ることになります。 サイードの旅はなかなかタフなもののはずですが、サイード自身が本当に賢い人間であり、どの賢者からもその意図することをすぐに理解して道を決めている。…かなりチートな人間です。ラストに行くにつれ、オチは見えてきますが、どの賢者の言葉も聡明で美しく、勇気をくれるものだと感じられました。 厳選!各賢者の言葉     すべての賢者の言葉をご紹介するとネタバレ過多になってしまうと思うので、 ここでは第五の賢者までをご紹介 していきます。 第一の賢者:アクト        P38 行動の結果として手に入るピースには、失敗も成功もない。 私は特にそうなのですが、がんばったのだから何かポジティブな結果が得られるはず、という思い込みによって苦しめられることがあります...

新版 ハマトンの知的生活

 知力・精神力を高めるための日々の過ごし方 6月も終わりが近づき、2023年も折り返しとなりました。皆さんの今年の目標の進捗状況はいかがでしょうか? 今日ご紹介するのは、 ”新版 ハマトンの知的生活(P.G.ハマトン著/渡部昇一・下谷和幸 訳/三笠書房)” という1冊。 こちらの原著は1873年に The Intellectual Life というタイトルでマクミラン社という会社から出版され、以降絶えず版を重ねてきたという本です。大学に通わず、フランスに定住しながら当時イギリスの代表的な学者・芸術家・作家・詩人に尊敬されたというハマトンさん。彼が織りなす知的生活の心得は、多くの人間に影響を与えてきました。 明治以降、日本の旧制高校や大学の英語教科書でもさかんに使われてきたということで、知っている方もいらっしゃるかもしれません。 今回はこちらの電子書籍版を発見して読みました。2022年に電子書籍版として出版してくださったようです。 知性を豊かにすることは心技体すべてを強くすることと繋がっていることがよくわかる1冊ですよ。 こんな人におすすめ 生涯続く学びの心得を身につけたい人 生き急いでいるのをやめたい人 概要           文章の構成           ハマトンさんの考える、 知的生活を送る秘訣 がまとめられています。 「知的生活」がどいうものかというと、ここでは 学者・何かを研究し人に教えるような立場の人 が取り組む生活を指しているようです。しかし、 書かれていることは非常に普遍的 です。 P5 知的に生きるとは、何かを成し遂げるということというよりは、むしろ一種の精神状態である。 と語られている通り、 自己修練とは何か 己の精神を鍛えるために何をするか 勉強はどうやるものか といった学びに対する姿勢を主にまとめています。 1つ1つの章は、「○○に悩む人へ」という副題がつけられ、悩める若者への応援の手紙のようなつくりになっています。 知的生産は健康に左右される    P24 順調な知的生活は、順調な肉体の働きに左右されるものだ とカントの言葉を引用し、偉大な学者たちがどんな生活をしていたのかを紹介しています。 食事の摂り方 睡眠のとり方 几帳面はどこまでか ビールやワインの飲み方 運動の仕方 などなど。今でも大事にするべき健康法がわんさかと載ってい...

世界初のビジネス書 15世紀イタリア商人ベネデット・コトルリ15の黄金則

世界で最初の『商売術』の記述 ビジネスの本からは色々なことが学べますね。もちろん商売に必要な知識もですが、よくよく読んでいくと、結局は、 人が生きていくときに大事にすべきことが商売に繋がっている と気づきます。 今回は、 ”世界初のビジネス書 15世紀イタリア商人ベネデット・コトルリ15の黄金則(アレッサンドロ・ヴァグナー編/伊藤博明 訳/すばる舎)” をご紹介します。 「世界初」とつくとまずは一読しておこうかと思ってしまうので困りものですが…古代に生きた方々の遺してくれたものには、よりシンプルで、格言的で、生きるのを楽にしてくれる言葉が多くあります。 概要           文章の構成           大きく分けると、以下のような内容です。 15世紀のイタリア・ルネサンス時代について イタリアで活躍したベネデット・コトルリについて コトルリの遺した商売に必要な15の黄金則 コトルリが書いた「商売術の書」が、実は複式簿記について最初に記述したものだったとわかり、会計史の世界で注目を浴びることになったそうです。 コトルリは、 商売が人間の生活にとって有益で不可欠なものである 、と宣言し、両替や為替を積極的に認めていく姿勢を取りました。商人を志す者こそ幅広い知識と情報処理能力が必要だと説いています。 15の黄金則は、現代の読者に伝わりやすいようまとめてくれていますので、非常に読みやすい内容です。 完璧な商人とは         コトルリの考える商人の姿は、まさに 「善」の人間 という印象です。ネタバレとはなりますが、エッセンスをいくつか書き出しておこうと思います。 あらゆるタイプの人物を理解して関係を築く能力がある。 適切な場所を選び、不適切な場所を避けて活動する。 実行力がある。 先を見通す力がある。 時には寝食を削る必要が生じる。 利益は他の者たちにもあげさせる。 商人は友情と愛情において限度を設けなければならない。 商人は多くの知り合いと少しの友人を持つべきである。 無知は邪悪。暇があるなら書物を読め。 清潔で、単純で、都会的な衣服で満足せよ。 こうしてみると、商人として必要なことは人として必要なことでもあるようです。人としての在り方が商売にも影響するのだと教えてくれていますね。 商売が成功しているからといって驕ることなく、質素で、でも行動力があって、愛があ...

教養としてのラテン語の授業

 ラテン語を通して古代ローマと自分たちを知る授業 昨年からずっと読みたいなーと思っていてなかなか手に取れなかった1冊をご紹介したいと思います。 ”教養としてのラテン語の授業ー古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流(ハン・ドンイル著/本村凌二 監訳/岡崎暢子 訳)” です。 原著者は韓国の方で、韓国人初・東アジア初のロタ・ロマーナ(バチカン裁判所)の弁護士であった方です。韓国の西江大学のラテン語の講義を担当しており、その講義には一般人も聴講に訪れるほどの人気だった…ということで、その講義をまとめた1冊になります。 ラテン語の授業…とは言いつつ、本書で紹介するのは 「ラテン語を通して知る古代ローマの歴史・そして現代の私たちを内省する哲学」 のようなもの。 堅苦しくなく、ハン・ドンイルさんの実体験や学びを通して紡がれる言葉が”生きること”を励ましてくれる。そんな本です。 こんな人におすすめ ラテン語・言語に興味がある人 古代ローマの歴史・哲学が好きな人 人生を歩くことに疲れ気味の人 概要           文章の構成           計28章というなかなかのボリュームなのですが、1つ1つはそれほど長くありません。 基本的な構造は、 ①導入: 古代ローマの歴史や、ハン・ドンイルさんが留学中に体験したこと、また 韓国で教鞭をとる中で気づいたことなどをラテン語と絡めて紹介。 ②気づき: 歴史と実体験を振り返って得た学びを紹介。 ③読者への問いかけ: 人生の指南書のようなメッセージ。自問自答のススメ。 となっています。 文章は口語的で易しさ・優しさがあり、随所に励ましの言葉をちりばめてくださっています。ラテン語の授業と言いつつ、本書ではラテン語を通して歴史・哲学・宗教を知るという教養本。 読んでいて印象的なのは、著者のたゆまぬ勉強・洞察から生み出される言葉たちです。 「謙虚さ」 のにじみ出ている文章は、とても優しい気持ちにさせてくれます。 学生たちに向けて、 学ぶ時の心構え 自分との向き合い方 挫折との付き合い方 を教えてくれていますが、これは学生にとどまらずどの年代の人にも響くことでしょう。 偉大なる幼稚さを持て      人生において学問に打ち込むとき、高尚な大義名分は必要ない、と著者は語っています。ちょっと見栄を張りたいくらいの気持ちでかまわない。大事なのは、 ...

生物から見た世界

 人間以外の生物たちは世界をどのように感じているか 今日ご紹介するのは、生物たちのお話。 少し古い本にはなりますが、 「環世界」 という言葉を提唱し、生物たちの知覚の違いから世界の見え方を広げてくれる一冊です。 ”生物から見た世界(ヤーコプ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート著/日高敏隆、羽田節子訳/岩波書店)” は科学の古典としても有名です。 古典ってすごいなーと感じるようになった今日この頃。魅力的な本は時間が経っても心打つものがあります。時代に合わせて訳し直してくださっている方々に頭が下がります。 こんな人におすすめ 生物が好きな人 人間世界に疲れ気味の人 概要           文章の構成           ”環世界” というものを様々な生物の観点から紹介していく1冊になっています。 環世界はユクスキュルが提唱した生物学の概念で、 「すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、それを主体として行動している」という考え方 を指します。 様々な生物たちを観察した実際の研究をいくつか紹介し、われわれ人間とは違う知覚をする生物たちの様子から、彼らが同じ地球の上でもまったく別の”世界”に生きていることを伝えるものです。 正確には、ありのままの自然がそこにあり、それをどう知覚するかが種によって異なる…というようなことだと認識していますが、見えるもの・感じるものが違うのだから、まったく別の”世界”であると言ってもいいですよね。 人間は世界をありのままにみることはできない、とされていますが、よりそれを強く感じさせるような内容です。 ダニの世界を知る        本の最初で紹介されるのがマダニです。 マダニは視覚を持ちません。聴覚も持たない。ただ哺乳類の皮膚腺から出る酪酸の匂いを感知できるそうです。 運良くマダニがいる木の下を哺乳類が通ってくれれば、それを感知して落ちていく。おいしい血のごちそうにありつくことができ、産卵ができる。しかしそれは死ぬことと同義で、産卵したらあとは死ぬこと以外にすることがない… 人間感覚で言えば、儚いような、悲しいような気持ちにさせるような一生です。 さらに、ごちそうに辿り着けるかどうかは完全に運。マダニはその時がくるまで絶食が可能なのだそうです。ロストックの動物学研究所では、18年間絶食しているダニが生きたまま...

読書について

もっと言葉を大切にしようというメッセージ 今日は古典のご紹介で、読書が好きだという人にこそ読んでみてほしい1冊です。 ”読書について(アルトゥル・ショーペンハウアー著/鈴木芳子訳/光文社)” では、 自分の頭で考えるということ 読書をする際の心得 文章を正しく書くことの大切さ を教えてくれています。終始、ドイツ人の文章への向き合い方を壮大にディスっているような、正直すぎる言葉たち。現代の私たちの心にもぐっさりと刺さることでしょう。 こんな人におすすめ 読書する意味を考えたい人 自分が本好きであることに自信がある人 概要           文章の構成           ショーペンハウアーさんはドイツ人の哲学者。 彼はドイツ国民の文章への向き合い方・読書への向き合い方に疑問を呈し、彼なりの考え方を披露してくれています。言葉遣いがかなり”正直”なので、強い意志・憤り・熱意が感じられます。 章は大きく3つに分かれています。 ①自分の頭で考える ②著述と文体について ③読書について 最後は訳者の方の解説が入っています。 過去の偉人たちの歴史背景や、ざっくりとした著者の主張をまとめてくれているので、解説から読むのも良いでしょう。 自分の頭で考える:真理と洞察を自分で手に入れる こちらの章では、 「もっと自分自身で考えろ!」 ということを切々と語ります。 P6 どんなにたくさんあっても整理されていない蔵書より、ほどよい冊数で、きちんと整理されている蔵書のほうが、ずっと役に立つ。同じことが知識についてもいえる。いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜吞みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。 手に入れた知識をどうやって使うのか? 数多ある知識を自分のものにする。それがやりたくて本を手に取り、読み込んでいるはずなのに、いつの間にかただのコレクターに成り下がっている… そんなことが昔のドイツにもあったんですね。そして、現代でも同じようなことをやっている気がする。 悩んだら本を読め! という昨今、確かに本はたくさんの選択肢を見せてくれますが、あまりにその選択肢も多くなりました。ショーペンハウアーさんの生きていた時代よりももっと多くの知識・解釈であふれているのですから、それを選択する能力・自分で考え自分のものにする能力を高めるこ...

人生の短さについて

 人間の弱さに配慮した現実的な哲学 今回は、古代の哲学者 ルキウス・アンナエウス・セネカ が書いたとされる3つの手紙をまとめた本を紹介したいと思います。 ”人生の短さについて 他2編(セネカ著/中澤務訳/光文社)” では、セネカの妻の親族(おそらく義理父)に向けたもの、母ヘルウィアへの手紙、そして年下の親友セレヌスへ向けたアドバイスの3つを収録しています。 セネカは日本でも人気の哲学者で、賢者になりきれない人間の弱さに配慮した、より現実的に実践できることを語っていました。 こんな人におすすめ 人生の時間の使い方を考えたい人 苦境の中でのマインドを学びたい人 概要           セネカとは           古代ローマの哲学者セネカは、アウグストゥスの優れた政治の後、続く皇帝たちによってダメになっていく統治の中で政治の世界に飛び込んだ人物。 途中、8年間の流刑に処せられてコルシカ島に追放されたときもありました。 最終的には、皇帝ネロの教育係として勤めたあと、自殺に追い込まれてしまう悲しい最期でした。 しかし、彼が残した言葉は現代を生きる私たちにも通じるものが盛りだくさんです。 こちらの本では、 「時間の使い方」「悲しみの慰め方」「若い時の仕事への向き合い方」 を主に語ってくれています。 パウリヌスさんへ ~多忙な生活は人生を短くする おそらくセネカの妻の親族だとされるのがパウリヌスです。彼は非常に多忙な食糧管理官で、それを心配したセネカは「多忙では人生を短くする」と言い、この手紙を贈ったとされています。 P15 だれもが、ほかのだれかのために、使いつぶされているのだ。 自分の金銭を他人に分け与えることはないのに、自分の人生は分け与えてしまう。それって時間の無駄遣いじゃないのか?50歳を過ぎたら引退しよう…ってそこまで生きている保証はある?生きることをやめなければならないときに生きることを始めるなんて、遅すぎるじゃないか… 古代の人々も、忙しい毎日を送っていたのでしょうね。身分が低い人も、ある程度の役職について仕事をしている人も。 時間は、放っておいたらすぐに過ぎてしまうから、 理性を使って時間を長くするのだ と教えてくれています。 酒や性におぼれることも、多忙すぎることも、本当の意味で”生きる”ということから遠ざかっているのだと。 P28 ある人の髪の...

暇と退屈の倫理学

人がなぜ退屈するのかを哲学する P1:我々は妥協を重ねながら生きている。 こんな言葉からスタートするこちらの本。 ”暇と退屈の倫理学(國分功一郎著/新潮社)” を今日は紹介していきたいと思います。 冒頭のこの言葉、今の自分の生き方に疑問を持つ人ほど、どきっとしてしまうでしょう。 何か違う。なぜこうなったか。いや、そうじゃない。でも…と考えているうちに、自分を納得させる言葉を探している私たち。 私たちが常日頃感じる「暇」「退屈」を分析してみましょう。 こんな人におすすめ 毎日退屈ばかり感じる人 何を頑張ったらいいのかわからない人 哲学者の思考に興味がある人 概 要          文章の構成          難しくない文章ですが、けっこうなボリュームの本。 1つ1つ解決しながら進んでいく本なので、個人的にはあまり読み飛ばさずに最初から精読していくほうがいいなと思っています。 歴史に沿い、哲学者たちの意見を引用して分析し、人間が思い悩む「暇」「退屈」の正体に迫っていく。そしてその解決方法があるのかどうか考えてみる。 多数引用される哲学者たちの言葉は現代でも十分に納得できるものばかりです。 おおまかな要点        好きなこととは何か? 人類が豊かさを目指して頑張っているうちは、むしろこんなことを考える余裕なんてなかった。生きるためにやることがいっぱいあった。みんな豊かになって、余裕を持ちたいと思ってきた。そして豊かさを得た… にもかかわらず、私たちは豊かさを得てやることがなくなった結果、今度は何をしたらいいのかわからないと思い悩み、苦しむようになりました。 それなら豊かになんてならなければよかったんだ。毎日生きるのに必死なままにしておけばよかったんだ…なんて本当に? 私たちは、金銭的・時間的余裕ができたら何をしたいのでしょうか。皆さんには「これがわたしの好きなこと!やりたいこと!」を思えるものがありますか?そしてそれを実行していますか?それは誰かに強制されたものではなく、本当に自分の心からやりたいことですか?サブリミナル効果で広告宣伝により供給され刷り込まれたものではないと言えるでしょうか? 何となく、人生は飾らなくてはならないと思っている。そうでなければ、退屈になってしまうのです。することがないと、怖いのです。 暇と退屈を哲学する ここからいよいよ、哲学の時間...